夜明けの怪人図書館

不定期更新。やっぱり本が好き。

レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』

さて、今回のテーマは前回ちょっと触れたゴシック・ホラー『吸血鬼カーミラ』です。

 

 

吸血鬼を題材とした作品といえば、世界的には『吸血鬼ドラキュラ』がメジャー。現在は“ドラキュラ伯爵”という本来の人物名が吸血鬼の代名詞になるほどですが、その『吸血鬼ドラキュラ』もこの『吸血鬼カーミラ』の物語が無ければ存在していなかったかもしれません。

 

 

舞台は19世紀のオーストリア。父や家庭教師と城に住む少女:ローラが、19歳の時に経験した話をまとめた手記、という形式でストーリーが進みます。

ストーリーを解説しようとするとどうしても軽いネタバレを含んでしまうのですが、タイトルが既に殆んどバラしてるので、あまり気にせず書いちゃいます。

 

結構なお嬢様ながら、城から村は非常に遠い為に、常に寂しい思いをしていたローラ。

ある日、父と親交のあるスピエルドルフ将軍から、彼の姪が死亡したと手紙が届く。姪と友達になる事を心待ちにしていたローラは、その直後にカーミラという美しい女性と出会い、彼女はローラの城に滞在する事になる。

 

不可解な点が多々あるものの、ローラに並々ならぬ情熱を見せるカーミラ。そしてローラも、カーミラに段々魅了されていく…。キマシタワー

同時に、カーミラが城に現れたその時期から周辺で数々の異変が起きる。幽霊の目撃、謎の熱病…。カーミラと瓜二つな、100年以上前の伯爵夫人:マーカラ肖像画…。そしてローラ自身も女の幻影に襲われ、熱病を患う。

 

クライマックスで、姪を亡くしたスピエルドルフ将軍が衝撃の事実を明かし、カーミラの正体が判明する。将軍の姪も、カーミラにソックリなミラーカという女性と接触していたのだ。

吸血鬼伝説が残る廃村の古城。そこに隠されていた棺の中には……

 

 

吸血鬼には色々な弱点がありますね。太陽光の下では活動できないとか、十字架に弱いとか、聖水や銀の弾丸で倒せるとか、ニンニクが苦手とか…。カーミラにも幾つか普通の人間とは違う点があります。

 

寝る時は部屋に鍵をかけ、起床は午後になってから。朝食はホットチョコレートを1杯飲むだけ。讃美歌を聴くと真っ青になり、気絶しないようローラの体に寄り縋る。

八重歯が非常に尖っていて、大道芸人にツッコまれた時は「あんな失礼な事を言う人は、拷問して骨まで焼いてやるわ!(意訳」とまで言ってブチ切れる…。

そして上記で解説した通り、滞在と同時期に周囲で謎の熱病が流行る。幽霊が目撃される。瓜二つの女性の肖像画が見つかる。将軍の姪が死ぬ直前に、よく似た女性と接触している…。カーミラさん、どう見てもチェックメイトです

 

とはいえ、この作品はミステリではなくゴシック・ホラーなので、「熱病や怪奇現象の犯人は誰か」よりも「ローラに迫る怪異と病は対処法があるのか」と「美しくも妖しいカーミラという女性は何者か」を楽しむのが中心になるかと。

そしてエンディングでは……「ひえぇ~!」ってなった(語彙力喪失)。ゴシック・ホラーだし、吸血鬼モノだから解決策は“それ”だろうと思っていたけど、壮絶な描写をさらっと書いてる。『吸血鬼ドラキュラ』に比べたら映像化が極端に少ない今作だけど、もし今後カーミラを演じ切る女優が現れたら、きっと世界中から称賛されるはず。

 

 

世界的に有名な『吸血鬼ドラキュラ』は、ブラム・ストーカーがこの作品に影響を受けて執筆したらしい。誇張抜きに、『吸血鬼カーミラ』は吸血鬼モノの祖なのだ。

尚、今回参考にした創元推理文庫版には、他にも6作の怪奇小説が収録されている。また、2015年に亜紀書房から『女吸血鬼カーミラ』のタイトルで新訳版も発売されているので、こちらもチェックしたい。

 

ところで、最後まで謎のままなことが幾つかあるんだけど…。あの女性は一体……

 

 

★今回の一冊

吸血鬼カーミラ』(1970年 / 東京創元社創元推理文庫

 

★参考文献

教えてFGO! 偉人と神話のぐらんどおーだー』(2017年 / 星海社星海社ミックス

女吸血鬼カーミラ』(2015年 / 亜紀書房